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この言葉をよく耳にする方も多いようなので、今回は「スヌーズレン」(snoezelen)について考えてみたいと思います。
スヌーズレンとは、オランダ語の「くんくん匂いをかぐ」と「うとうとする」という2つの言葉をあわせた造語で、簡単に言うと心地よい感覚刺激(光、音楽、触感、香りなど)を提供し、それらを楽しみながらリラックスしてもらう活動のことです。
重度の知的障害を持つ人々との関わりの理念としておよそ25年前にオランダのエデにある知的障害を持つ人の施設、ハルテンベルグセンターで生まれ、今では発展して世界に広まりました。
障害を持つ人ができるだけ感じ取りやすく、楽しみやすく、リラックスしやすいように、光、音や音楽、感触やさまざまな香りなどを体験できる素材を揃えた環境を作り、設定します。
そして障害を持つ人との活動で、介護者は治療効果や発達を一方的に求めず、障害を持つ人の人や物への対応の仕方をありのままに受け入れます。つまりは障害を持つ人々が受け入れやすい刺激や環境を設定し、そこでは障害を持つ人自身が、自分の意志で選択し、自分自身の時間を持ちます。
ここで忘れてはならないのが、介護者は同じ人間として刺激を楽しみ、互いの感じ方や喜びを共有します。つまりはスヌーズレンは、一方的な治療方法や教育プログラムではないのです。
スヌーズレン用品として一般的に使用されているものが、ミラーボールや光ファイバーなどですが、機器の一つひとつは個人で購入するには非常に高価なものです。最近は、ホームセンターやインテリアの店やおもちゃ売り場などで似たようなものが売っている場合があります。
桜木園ではプレイルームをその時々の環境設定により感覚刺激を楽しめるようにしています。ミラーボールや照明を使ったり、さまざまな効果音などを使って入所者の変化を観察しています。その中で、入所児(者)と職員が寄り添ってリラックスをします。私達の日常の生活の中にはいろいろな音が混在しているわけですが、その時々に自分に必要な音を聴き取ろうと集中し、また、雑音が多くて聴き取れない場合は、場所を移動したりテレビのスイッチを切ったりするのですが、障害児(者)にとってそれはなかなか困難なことなのです。
障害児(者)が聴き取りやすく、感じやすいように余分な音や光を調節することにより、当園でも実際に入所児(者)に新しい発見がありました。
例えば、音楽や環境の変化にあまり興味を示さないと思われていた方が実はとても興味を持っていて、しかも曲によって反応の違いが顕著に現れたりしました。
また、いつも寝てばかりいる方が、曲が変わるたびに身体を起こして、音のする方向を探すような行動が見受けられました。介助者側が出す騒音(障害児(者)にとって心地の良くない音)によって、もしかすると、障害児(者)は目を閉じて、自分の心を閉ざそうとしているのではないか?と考えさせられました。
スヌーズレンルームとしての環境を整えること、その中で対象者とどう関わるかが成功の鍵ではないかと思います。もしかすると、介助者が障害児(者)の光・香り・振動・触覚・音などを感じる力を邪魔しているのではないでしょうか?
下記の写真はスヌーズレンで使用される一般的な用具です。実際に桜木園で使用されているものです。
写真はバブルチューブと言われるものです。透明なチューブの中を移り変わってゆく4色の光が視覚刺激をもたらすと同時に、チューブの下から水面へ浮き上がってくる泡の動きや音から様々な刺激を得ることができます。利用する方によっては、視覚に障害のある方でもモーターの回転する振動などに興味をもつことがあるようです。
写真はサイドグロウと呼ばれるものです。これは熱をもたないので、触わることもできますし、身体にかけたり上に寝転がって楽しむことができます。また、装置内部の4色の回転盤が回転するごとに色が変わります。利用される方も、手にとって振ったりつかんだりして楽しんでいるようです。
写真はスヌーズレンルームの心地よい雰囲気を作るために使用される「プロジェクター」です。写真は雲をイメージしたものですが、回転盤がゆっくり回ることで流れる雲が出現します。他にも回転盤を取り替えることでいろいろな映像を映し出すことができます。
スヌーズレンを行う場合に適切な環境設定が必要になります。ぼんやりとしたやわらかな光や静かな音楽を流して行います。そして心地よい空間をつくるために、やわらかなクッションや椅子などをおいて環境を整えます。一般的に、リラクゼーションを目的として「ホワイトルーム」と呼ばれる環境設定がなされます。この場合、壁や天井、床などに白い布などを使って部屋全体を白色にレイアウトすることが多いようです。
一度環境を整えればそれでよいというものではありません。利用する方によっては、嫌いな光の刺激がある場合などはその刺激を弱めたり、場合によっては取り除く必要があります。一つの用具だけで満足する方もいれば、全ての用具を使用した時の複合的な光刺激に興味を持つ場合があります。スイッチングで、スムーズに使用する用具を動かせるようにすると、より効果的です。何よりも安全面に注意しなければならないことはいうまでもありません。
だいたい1時間ぐらいが目安だと思います。15~30分ぐらいだと、光を楽しむだけで終わってしまい、肝心なリラクゼーションを得ることができません。もちろん、リラックスできているならば、2時間から3時間続けるとさらに効果的です。
基本的に「見守り姿勢」をもつことが必要です。スヌーズレンでは介助というより、職員や保護者など、そばに寄り添う人も刺激に対して「共感」し、その中からコミュニケーションとか意思の疎通を促すことが大切です。あれこれと指導をしたり効果を求めることは、スヌーズレンの理念からはずれています。スヌーズレンルームに入ったら、あくまでも主導権は介助者ではありません。また、すべての方にスヌーズレンルームが適しているとは限りません、中には興奮したり恐怖感を覚える方もいます。慎重に観察しながら進めていく必要があります。
外来療育としてスヌーズレン体験を予定しています。詳細はこちら外来療育のお知らせ